Runway 主催「AI Film Festival 2025」現地レポート

文・撮影:栗本一紀(AI日本国際映画祭 実行委員)/2025年6月6日

ニューヨーク発 — ”AI映画が“ステージ”に上がる日”

2025年6月5日(木)、マンハッタンのリンカーンセンターにあるAlice Tully Hallにて、AI映像表現の祭典「Runway AI Film Festival 2025(AIFF)」が開催された。Runway社によるこの映画祭は今年で3年目。生成AIを用いた映像作品のみを集めた映画祭として、世界的な注目を集めている。

その“未来映画祭”に、AI日本国際映画祭(AI-FJ)の実行委員の一人として参加することができた。

会場に押し寄せた700名超の観客と熱気

イベント会場となった「Alice Tully Hall」は、クラシック音楽や現代アートの殿堂的空間。その1,000席を超えるホールには、AI技術と映像の未来に惹かれた700〜800名が詰めかけ、ロビーには早くから来場者の長い列と、熱気を帯びた会話の渦が広がっていた。

Cristóbal Valenzuela氏のオープニングスピーチ

上映直前、Runwayの共同創業者でありCEOのCristóbal Valenzuela氏がステージに立ち、こう語った。

「3年前、これは“とんでもないアイデア”だと思われていました。でも今、世界中で何百万人もの人が、何十億もの映像をAIで生み出している。私たちはその最前線を、この映画祭で共有しているのです」

応募総数6,000本超、最終選考に選ばれた10作品

今年の応募作品数は実に6,000本以上。これは初回(2023年)の約300作品から、20倍のスケールアップにあたる。

そこから選ばれたファイナリスト10作品は、ジャンルも語り口も多様で、実験映像、詩的なアニメーション、ドキュメンタリー、そしてSF的な短編などが並んだ。

注目作品:
  • 『Total Pixel Space』(Jacob Alder):デジタル空間に存在し得る“すべての画像”を数学的に検証しようとする映像詩。グランプリ受賞。

  • 『Jailbird』(Andrew Salter):イギリスの刑務所を訪れる一羽のニワトリの目を通して語られる“再生”の物語。

  • 『One』(Ricardo Villavicencio & Edward Saatchi):未来の惑星間移動を描く詩的なサイエンス・フィクション。

実験性の強さにやや偏りも

一方で、個人的な感想としては「Narrative(物語)性を備えた作品が少なかった」点はやや惜しまれる。

最終選考に残った10本のうち、6〜7本は実験映像や視覚詩のような作品。映像詩の魅力もあるが、AIだからこそ描ける“ストーリー”がもっとあってもいい。その可能性は、来年以降への宿題とも言える。

映画祭のプログラム全体は約90分。そのなかに上映と授賞がすべて詰め込まれており、授賞式そのものはきわめて簡潔。受賞者のスピーチやコメントも一切なく、むしろ「静かでストイックな終幕」が印象的だった。

Runway CEOとの対話

イベント終了後には、Runwayの CEO クリストバル・バルエンセラ(Cristóbal Valenzuela)氏 と直接、話をする機会を得た。

今年11月に東京で開催予定の 日本初のAI映画祭「AI日本国際映画祭(AI-FJ 2025)」 について紹介したところ、大いに関心を示してもらえ、賛同の言葉をいただいた。

彼の「かつては夢だったツールで、今では何百万人が何十億もの動画を作っている」という言葉には、深いリアリティがあり、まさに、私たちが目指すAIと映像の未来と重なった。

AI映画の現在地とその“先”をどう描くか

Runwayは、自社の生成映像AIモデル「Gen-4」シリーズを軸に、この映画祭を支えている。近年ではYouTube、TikTok、TwitchなどでもAIによるショートムービーが爆発的に広がっており、その創作エコシステムがリアルな会場で体現されていた。

こうした世界潮流を受けて、私たち「AI日本国際映画祭(AI-FJ 2025)」が今年11月に日本で初開催するAI映画祭も、「技術」ではなく「文化」としてのAI映画」を問い直す場でありたい。

AI Film Festival Japan

一般社団法人設立のお知らせ

2025年5月8日

『AI日本国際映画祭』は、日本国内において一般社団法人(非営利組織)として正式に登記を完了し、映画祭プロジェクトの新たな一歩を踏み出しましたことをご報告いたします。

この法人化により、私たちは「非営利」の理念のもと、クリエイティブ・コミュニティに対する貢献をより明確にし、世界の多くの名高い映画祭と同様の運営体制となります。

今後は、文化・教育分野での取り組みをさらに拡大し、さまざまなパートナーとの協力を一層強化していきます。また、営利目的ではなく、アーティスティックなビジョンに基づく映画祭運営を継続してまいります。

正式なプレスリリースは近日中に公開予定です。引き続き、皆様の温かいご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

AI 日本国際映画祭実行委員会

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